- 白鳥とは
- 種類と概要・分布
- 白鳥3種の種類別特徴
- 白鳥3種の見分け方
- 白鳥の飛来条件
- 白鳥の食べ物と餌場
- 日本の主な白鳥飛来地
- 白鳥4種の茨城県の観察場所
白鳥は、カモ科ハクチョウ属の水鳥の6種の総称で、現生の空を飛ぶ鳥の中では最大級の大きさ・重量を有している。日本で越冬する白鳥は、オオハクチョウとコハクチョウの2種類である。
ハクチョウ属の学名は、ラテン語のCygnus(シグナス)、英名ではSwan(スワン)で、日本では、白鳥(ハクチョウ)と呼ばれるが、世界には羽が黒い黒鳥や首が黒い種類もいる。
種類によって寒帯(ツンドラ地帯)・亜寒帯(タイガ地帯)と温帯を季節に応じて南北に移動(渡り)するか、一定地域に生息している。日本では、白鳥と言えば、オオハクチョウとコハクチョウで北極海に面したロシアのツンドラ地帯やタイガ地帯、サハリンやカムチャッカ半島等で繁殖し、日本の北海道や本州の一部地域で越冬する。
浅瀬のある河川、湖沼、内湾などに生息し、水草の葉、茎、地下茎、根、穀物や牧草、海藻、昆虫等を食料としている。
白鳥は、親子、夫婦の絆が大変強く、つがいはどちらかが死ぬまでかわることがない。
世界の生息地において、古代から人とのかかわりが深く、美や愛、幸福の象徴として国・州・県・市町村・組織等のシンボルや、店・人・物の名前、芸術の対象として利用されている他、様々な伝説がある。
世界には、白鳥属(Cygnus)の白鳥としてコブハクチョウ、コクチョウ、クロエリハクチョウ、オオハクチョウ、ナキハクチョウ、コハクチョウの6種類がいる。日本で越冬する白鳥は、オオハクチョウ、コハクチョウの2種類で、移入された外来種のコブハクチョウやコクチョウは、一部地域の自然環境でみることができる。コブハクチョウは、国内間(北海道~茨城県)の渡りも確認されている。また、コクチョウ、クロエリハクチョウは、動物園等で見ることができる。また、ナキハクチョウも過去に日本に飛来した記録がある。
※以下の白鳥の種類の掲載順は、日本でなじみが深いと思われる順番です。
オオハクチョウ(大白鳥)
学名:Cygnus cygnus 和名:大白鳥 英名:Wooper Swan
アイスランド・スカンジナビア半島北部からカムチャツカ半島・サハリンにかけてのユーラシア大陸北部などで繁殖し、冬季になるとイギリスやイタリア北部・スイス・黒海沿岸・カスピ海・中華人民共和国の太平洋岸・大韓民国・日本などで越冬する。日本では、北海道から、太平洋側では茨城県・千葉県の利根川付近、日本海側では福井県あたりまでが越冬の南限である。
オオハクチョウの詳細と見分け方コハクチョウ(小白鳥)
学名:Cygnus columbianus 和名:小白鳥 英名:Tundra Swan
ユーラシア大陸北部で繁殖し、冬季になるとヨーロッパ(アイルランド、イギリス南部、オランダ、デンマークなど)、カスピ海周辺、韓国・中国の東部、日本などへ南下し越冬する。日本では、北海道や青森県を中継し、本州の宮城県から島根県あたりまでが越冬地である。
コハクチョウの詳細と見分け方
別途、亜種として嘴(くちばし)が黒いアメリカコハクチョウがいるが、亜種を独立種とする説もある。
※アメリカコハクチョウ
アラスカ州やハドソン湾などで繁殖し、冬季になるとカリフォルニア半島やチェサピーク湾などへ南下し越冬する。まれに、日本へも渡りをすることもある。コブハクチョウ(瘤白鳥)
学名:Cygnus olor 和名:瘤白鳥 英名:Mute Swan
ヨーロッパ、中央アジアを中心に生息する白鳥で渡りも行う。
日本では、1950年代に飼い鳥としてヨーロッパから移入された外来種であるが、北海道、青森県、茨城県、鹿児島県等一部地域で繁殖・野生化し、通年見ることができる。また、管理されている公園の池や動物園等で見ることができる。
コブハクチョウの詳細と見分け方クロエリハクチョウ(黒襟白鳥)
学名:Cygnus melancoryphus 和名:黒襟白鳥 英名:Black-necked Swan
南アメリカ南部のパタゴニアやフォークランド諸島の淡水の湖、湿地、干潟に生息する。
頸(くび)が黒い。全長約105センチメートル。赤い鼻瘤(びりゅう)があり、嘴(くちばし)は灰青色、足はピンクである。南半球の冬には、北に向かってパラグアイ、ボリビア、ブラジル南部で越冬する。日本では、かつて京都市動物園、横浜市立金沢動物園、福岡市動植物園等でクロエルハクチョウが見られたが、2023年10月時点では飼育していない。狭山市立智光山公園こども動物園に2023年10月時点で1羽飼育されており見られる。
※日本で見られるクロエリハクチョウの最後の1羽かもしれません。ナキハクチョウ(鳴白鳥)
学名:Cygnus buccinator 和名:鳴白鳥 英名:Trumpeter swanアメリカ合衆国北西部、カナダ西部の河川、湖沼、湿原、内湾などに生息し、長距離の渡りは行わないとされるが、日本への渡りの記録がある。鳴き声がラッパ(トランペット)のように響くことに由来する。全長150-180センチメートル、翼開張230-260センチメートルで、ハクチョウ属のみならずカモ科最大種である。嘴(くちばし)は大型で長く、黒い。
【日本への迷い鳥記録の例】- 1992年4月3日:一石ニ鳥で行こう!【復刻】ナキハクチョウ観察記(北上市展勝地)
- 2005年11月29日:野鳥 動画図鑑 :ナキハクチョウ(1)迷鳥(帯広市・十勝川ほか)
- 2006年2月11日: 鳥 とり 観察記:やったぁ!ナキハクチョウを撮る(久慈市)
- (1)オオハクチョウの分布・越冬
- 日本に飛来するオオハクチョウは、シベリアやオホーツク海沿岸で繁殖し、越冬のため樺太や千島列島を経由し北海道~東北や関東・中部地方に飛来する。
- (2)オオハクチョウの主な形態
- ※大きさ・体重ともに鳥類最大級です。雌(メス)は雄(オス)より小さい。
- 成鳥:全長:140~160cm程※
- 成鳥:翼開長:210~240cm程
- 成長体重:8~15kg程
- (3)オオハクチョウの特徴
- 鳴き声:コォーなどと大きく甲高く鳴く、状況によって様々な鳴き方をする。
- 飛行の離陸:体重が重いため水面からの離陸時に水面助走が必要
- 渡りの飛行の距離:3000km程
- フィンランドの国鳥
- (4)オオハクチョウの主な飛来地
- 北海道:屈斜路湖、濤沸湖、尾岱沼、風蓮湖、屈斜路湖、十勝川河川敷、ウトナイ湖、大沼他多数
- 青森県:浅所海岸、大湊湾、十三湖、小川原湖
- 岩手県:大堤公園・新堤
- 山形県:最上川スワンパーク
- 宮城県:伊豆沼、白石川河川公園
- 福島県 猪苗代湖・白鳥浜
- 茨城県:古徳沼、清水沼、白鳥の里
- 新潟県:瓢湖、鳥屋野潟、佐潟、福島潟
- 長野県:諏訪湖
- (1)分布・越冬
- ユーラシア大陸北部のツンドラ地帯で繁殖し、冬期にはイギリス南部、オランダ、デンマークなど)、カスピ海周辺から同緯度の日本など温帯へ渡る。日本では冬鳥で、ロシアのツンドラ地帯から北海道を経由し、本州の宮城県以南から島根県あたりまで飛来する。ツンドラ地帯からの渡りであるため、オオハクチョウより、越冬飛行距離が長い。
- (2)コハクチョウの主な形態
- ※大きさ・体重ともに雌(メス)は雄(オス)より小さい。
- 成鳥:全長:120~140cm程
- 成鳥:翼開長:180~220cm程
- 成長体重:5~11kg程
- (3)コハクチョウの特徴
-
- 鳴き声:コホッ、グワッ、コォーなどと鳴くがオオハクチョウより低い、状況によって様々な鳴き方をする。
- 飛行の離陸:体重が重いため水面からの離陸時に水面助走が必要
- 渡りの飛行の距離:4000km程
- 北海道や青森県は、渡りの中継飛来地
- (4)コハクチョウの主な飛来地
- 東北地方は、オオハクチョウと混在するため除外しています。
- 茨城県:菅生沼、乙戸沼
- 長野県:犀川白鳥湖、御宝田遊水池
- 新潟県:瓢湖、鳥屋野潟、佐潟、福島潟
- 滋賀県:琵琶湖湖岸(長浜市)
- 鳥取県:米子水鳥公園
- 鳥取県・島根県:中海
- 島根県:宍道湖
- (1)分布・越冬
- コブハクチョウは、もとはヨーロッパや中央アジアを中心にして生息する白鳥で、渡りも行うが日本では外来種である。茨城県のコブハクチョウは、皇居や彦根市・宇部市等から譲り受けたものが繁殖したものとされている。霞ヶ浦の北浦(潮来市:白鳥の里)には北海道のウトナイ湖、青森県の小川原湖からの渡りが確認されている。
- (2)コブハクチョウの主な形態
- ※大きさ・体重ともに鳥類最大級です。雌(メス)は雄(オス)より小さい。
- 成鳥:全長:140~160cm程
- 成鳥:翼開長:210~240cm程
- 成長体重:8~15kg程
- (3)コブハクチョウの特徴
-
- 鳴き声:グワッ、グシュ―というような声をだす。甲高く鳴くことはない。
- 飛行の離陸:体重が重いため離陸時に水面助走が必要
- 渡りの飛行の距離:日本における事例では750㎞
- デンマークの国鳥
- 日本でアは外来種とされており、農業被害や鳥インフルエンザ等の問題がでている。
- (4)コブハクチョウの主な生息地
-
- 北海道:ウトナイ湖
- 青森県:小川原湖
- 茨城県:牛久沼
- 千葉県:手賀沼
- 山梨県:山中湖
- 山梨県:宍道湖
- 鹿児島県:藺牟田池
- (5)コブハクチョウの外国の関連事項
- 英国では、法律上、国王がイングランドとウェールズの開放水域にいる印の付けられていない白鳥(コブハクチョウ)の所有権を保持しています。テムズ川の特定の場所に生息する白鳥は、800年間続いている「スワン・アッピング」という恒例行事で毎年調査され、個体数を管理しています。この管理者のチームをスワンマーカーといいます。
- また、イギリスのオックスフォード大学やウィンザー上のあるバッキンガムシャー州の紋章、オーストラリアのスワンユナイテッドFCのマークもコブハクチョウです。旗やマークに記載された白鳥のイラストでも、以下の白鳥の見分け方(くちばしの違い)を知っているとすぐわかります。
オオハクチョウとコハクチョウ、コブハクチョウは、全体が白色で大きさもほぼ同じなため単体や離れてみると区別がつかない。
<ハクチョウとオオハクチョウの違い(見分け方)>
オオハクチョウとコハクチョウとは、体重や全長、翼開長等大きさ、鳴き声等の違いがあるが大きさは成長段階、鳴き声は、オオハクチョウとコハクチョウ混在している場所が多く、また、その時の行動状況で変わるため判別しにくい。クチバシを見ると一目で違いがわかる。
<クチバシの違い>
オオハクチョウのクチバシは、黄色部の先端がが尖っているが、コハクチョウは、尖っていない。また、オオハクチョウは黄色部がくちばしの半分以上であるが、コハクチョウは半分以下である。また、オオハクチョウのくちばしはすらりとし先端が尖っているが、コハクチョウは、ごつごつした感じで先に丸みがある。
<オオハクチョウ・コハクチョウとコブハクチョウの違いと見分け方>
オオハクチョウ・コハクチョウとコブハクチョウは、クチバシを見ると一目で違いがわかる。
<クチバシの違い>
オオハクチョウ・コハクチョウは、クチバシが黒色と黄色で構成されるが、コブハクチョウはオレンジ色である。また、コブブハクチョウは、クチバシの上部の付け根に黒いコブのような裸出部がある。
オオハクチョウの違い(見分け方)
眼先に羽毛がなく黄色い皮膚が裸出し、この黄色部は鼻孔下部まで達し、尖っている。また、他の白鳥よりもクチバシもすらりとし、少し尖っている。
コハクチョウの違い(見分け方)
くちばしの先端が丸みを帯びているか、または角張って突出せず、オオハクチョウに比べて黄色の部分が少ない。また、くちばしの黄色部が尖っていない。
コブハクチョウの違い(見分け方)
扁平なくちばしはオレンジ色で、くちばし上部の付け根に黒いコブのような裸出部がある。
文洞沼の白鳥の食事【那珂市】
スイレンの名所の沼で深水は、0.5m~1m程度です。
白鳥の越冬数は、少ないですが日中に食事しているところを観察できます。
メインの餌は、スイレンの根や茎です。首を水面下に伸ばして食べる様子をご覧いただけます。なお、周りにオウバンがいますが白鳥と同じものを食べています。この映像には写っていませんがオウバンの場合には、水面下に数十秒もぐって餌を食べます。
スイレン名所の飛来地は、茨城県小美玉市にも池花池があります。牧草地の白鳥の食事【水戸市近接】
映像の餌場は、水戸市隣接の見晴らしの良い田園地帯でかなり広い田と牧草地があります。この場所には50~100程の数グループが離れて飛来しており、近隣の複数のねぐらから飛来していると思われます。この場所と異なる牧草地で農家の方から来た話では、最初は追い払っいたが、すぐに来てしますのであきらめたとのことです。3月北帰行すること、その後収穫までに育つこと、ふんが肥料にもなること、動物保護等も考慮しているような話でした。牧草は、イタリアンライグラスということで調べてみると秋種まきで、4月、5月、6月の3回収穫できることが記載されており、減収の影響はあると思われます。
白鳥の餌場への離陸【水戸市】
朝の6:30~8時ごろまでに、漸次餌場に向かって離陸します。
向かった場所は、前記の田園地帯と思われます。出発順番は鳴き声等何らかの方法で調整しているようです。沼は、霞ヶ浦の北浦のように大きくないため離着陸の飛行コースは1つです。グループごとの順番は鳴き声等何らかの方法で調整しているようです。この池の場合、池全体から徐々に西側に移動し、その中から10羽~20羽が2~3列に横並に並び漸次離陸していきます。白鳥のねぐらへの着水【水戸市】
4:30頃から暗くなある6:30頃まで漸次、ねぐらに戻ってきます。
概ね5分~10分間隔で10~20羽程度の集団で着水が続きます。
漸次暗くなるまで着水を観察できます。着水も何らかの方法で調整していると思われます